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そして迎えた朝。

 

 ○□ホテルまではバスと電車で向かいました。


 夫の位置情報は間違いなくこのホテル…。


 フロントで名前を告げ、部屋番号を聞こうとしましたが、個人情報なので教えてもらえず…。


 結局、ホテルのラウンジで待つことにしました。


 夫が出てくるまで、1時間以上は待ったでしょうか…。


(来た!夫だ!隣に誰かいる?!)


 すぐにスマホで動画を撮り始めました。


 夫の隣にいたのは…



 …モナ…?!



(間違いない…!あの時の…)


 夫と楽しそうに会話しながらホテルから出て行った彼女は、私が現地で夫から<通訳兼事務>だと紹介されたあのモナちゃんでした。


(現地の子まで日本本社のパーティーに来れてるの?!おかしくない?!)


 その場で問い詰めたい気持ちを抑えて、タクシーで帰宅。


 約束通り昼過ぎに帰ってきた夫の顔をまともに見られないまま、その日は娘の好きなキャラクターのショーに行きました。


 娘を抱っこしながら自撮りをしたり、楽しそうにしている夫…。


 モナとはどういう関係なの?!会社の同僚としての付き合い?!それとも…。


 悶々と過ごしていると、あっという間に夕飯の時間になりました。


「この後どうする?」


 と聞いたところ、また

 

「仕事関係の人と呑みが入ってるんだよねー」


 と言い出す夫…。


 いい加減このやりとりにも飽きたので…とりあえず言いたい事を言ってみることにしました。


「あのさ…ちょっといい…?」


 私はできるだけ感情を表に出さないよう努めながら、夫にこう言いました。


「娘の前だからあまり言い合いをしたくないんだけど…明らかにおかしい事してるってわかってる?」


 私の声は心の底から冷えたもので…自分でもこんな声が出せたんだ…と驚くレベルのものでした。


 流石の夫もそんな私のトーンに怯んだ様子で、私は即、娘を抱き上げると…。


「とにかく一回実家に帰るよ」

 

 と夫の返答を待たずスタスタと車の方に歩き出しました。


「待ってよ!だから俺は…今日…約束が…!」


 小声でゴニョゴニョ言う夫を無視して歩き続けると、夫も観念したのか後を追いかけて来ます。


 娘を母にお風呂に入れてもらっている間、いざ、戦闘開始!


「あのさ?まず会社がくれた一時帰国の休暇なのに、毎日毎日仕事があるのはどう考えてもおかしいよね?


 私だって馬鹿じゃない。気付いてないとでも思ったの?」


 「な…何が?!何?!疑ってんの?!」

 

 明らかにどもる夫の態度に、私の怒りは頂点に達します。


「疑うとかそういう事じゃなくてさ?おかしいと思わない?


 1週間の休暇で、私たち家族で一緒に晩御飯食べられたの、たった2回だよ?!


…仕事仕事って、本当に仕事なの?!」


 お得意の逆ギレをかまそうとする夫を手で遮って私は続けます!


「本当に仕事だって言うなら、会社に電話して聞いてみようか?!


 休暇中もこんなに出勤するのっておかしくないですかって!


 …ついでに社外秘だとかで妻にもどのホテルに滞在しているかすら教えられないって言われましたが、


 夫にどんな危険な仕事をさせてるんですかって…


 聞いてみようか?!今すぐ!?」


 私は勢いのまま、一気にそう詰めたのですが、夫の反応は…。


はっ!


 と鼻で笑うと…


「あいかはさ…疲れてるんだな…?育児は大変だもんな…」


 なぜか見下したように語り出す夫…。


「会社に電話とか…頭おかしいとしか思われないよ?…とにかくさ、俺は仕事なんだよ、仕事。


 わかる?家族を養うために、頑張ってんの!」


 そしてこう言い放ちました。


「あいかの育児ヒステリーには付き合ってらんないよ」


 …出来るだけ冷静に…と思っていましたが、夫から見下したようにヒステリーだと決め付けられたせいで色々我慢していたものが沸々と心の底から湧いてきました!


「何よそれ…!じゃあ本当に電話して聞いてみてもいいの?!」


「勝手にすれば?頭がおかしい女だって思われるだけだよ?


 …それにさ、俺結構良いパパやってんじゃん?俺に文句言うのなんてあいかだけでしょ。


 …はー…もうどうしちゃった?本気で心配なんだけど」


 私の手にはスマホが。


 さっき撮ったビデオを見せて、何故モナがホテルに滞在していたのか、何故私たちに黙ってパーティーに出席していたのか、全部ぶちまけてやりたくなりました。


「…私が本当に何も知らないとでも思ってるの?!」


 涙でぐちゃぐちゃの顔をあげて、夫の目を見ました。


「…あいかが何を疑っているのかがわからない」


 私をまっすぐに見つめて、夫はそう言いました。


(…人間、ここまでまっすぐに私の目を見て嘘をつけるもの?


 …もしかして本当に仕事が詰まっているとか…?!


 本当にホテルは社外秘なのかな…)


 私の心は揺らぎます。


 確かに私たちに黙って色々しでかしているけど…もしかしたら本当に夫は良い父親で、確たる証拠もないのに疑っている私の方がおかしいのかもしれない…。


 今考えると明らかに夫にマインドコントロールを受けているとしか思えないのですが…証拠がないということも大きく…私の怒りは徐々にダウンしていきました。

 

「ご…ごめんなさい…」


「わかった?!俺にやましいことは全くないし、俺は家族を大切にしてるんだから。これ以上訳のわからない事で俺を疑ったりするなよ!」

 


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